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日々のぼやき
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 キスの前に牙を立てるのは性癖というよりもはや本能に近かった。
 近いのだろう、と弥子は思う。謎を喰らうのと同列に、魔人はくちびるに容赦の無い疵をつける。おかげで唇の端はいつでも皮膚がめくれている。普段はグロスで隠しているけど、夜になるとすぐに分かる。
 
「最近、リップを変えたのかってよく聞かれるの」
 囁くように告げると、魔人はそうかと気の無い返事をかえしてきた。弥子のことばよりも弥子の制服に手を掛けることのほうが大切だと思っているような素振りだ。
 溜め息を吐いて魔人の首にうでを回した。生存機能は何ひとつ働いていない、なのに生きている魔人の皮膚は滑らかで冷たく、そして弥子の肌にしっとり馴染む。その首筋に、声を吐いた。白い息が冷たい肌をあたたかく濡らす。
「最近くちびるが紅いってよく言われるの。似合わないって、」
「そうか」
 ネウロの声は間近に聞こえた。感情が読み取りにくい声だったが、引き寄せられて与えられる捕食行為めいたキスは眩暈を起こすほどに荒々しい。
 牙を突きたてられる。口内に淀んだ、鉄の匂いに一瞬だけかおを顰めた。
「厭なら逃げ出せば良い」
 くちびるを離して、魔人は囁く。ひとみを覗き込んでくる虹彩には紅い唇をした自分が映っている。
「我輩はどちらでも良いのだ」
 と云いながらキスをする。眩暈にまぶたを閉じながら、弥子は、濡れた皮膚を穿つ牙は、本能というよりまるで楔のようだとぼんやり思った。
 
終わり。
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