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日々のぼやき
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 志貴と寝るのは好きだ。
 と、アルクェイドは思う。思うたびに、ちょっと今更なことだな、と苦笑まじりになるものの兎に角志貴と寝るのは楽しい。それが志貴相手だからか、それとも行為自体が性に合っているのかは判別しがたい。この世に生れ落ちて数百年が経つがこういった行為をしたことはなかった。したいとも思わなかったし、相手もいなかった。
「……あっ、」
 甲高い声が漏れた。濡れた志貴の一部がずぶりと中に入り込む。容赦なく内膜を擦る。その感覚をとらえようとして腰を揺らすと志貴がより深くに這入ってきた。
 荒らされる自分。犯される領域。
 生きている匂いのする志貴の肌と共に、それらの感覚はアルクェイドの本能を痺れめいた熱さで掠めていく。志貴に殺されたときの感覚と酷似している。たかがナイフで数十の肉片にされた、あの快感にも似た「死」に似ている。
「もっと、」
 催促すると、頭上から篭った溜め息が聞こえた。霞んだ視界をこじあけて見上げれば志貴が熱のこもった双眸でこちらを見ていた。呆れたようにも思える。そういえば以前、もっとオブラートに包んだほうがいいとかそんなことを言われた気がする。
 虹彩はやけに明るく、そして奥底はひどく深い。直死の魔眼だ。志貴には今「死」が見えているのだ。摂理に反した自分の死が。
 そう思うと全身が震えた。両腕で志貴のくびを掻き抱くと志貴の一部がぶるりと震えた。奥をつつかれてまた声が出る。断末魔のようだとぼんやり思う。
「しきぃ…」
 名前を呼ぶと、間近で「吸血鬼みたいな目だ」と囁く声がした。自分の目だ。魔眼に貫かれる紅い眸。
 そうか、本能になっているのだとようやく気付く。自制が生きる術である真祖だからこそ、本能に陥ることはまずないと言ってよかった。
 これが本能か。
 アルクェイドは思う。
 熱くて、苦しくて、浮かび上がりそうなほどに気持ちがいい。これが本能だというのなら魔王に堕ちても構わなかった。
「しき、」
 呼びかけるといっそう強く荒らされた。アルクェイドは薄くわらう。たぶんまた志貴は淫乱だと呆れるのだろう。それも良いかという気分になった。
 
 志貴と寝るのは好きだった。
 志貴と寝るたびにアルクェイドは朱い月の影を見ては、死の線に貫かれる。その生と死を愉しんでいるのだと、彼女自身はまだ気付いていない。
 
終わり。
 
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