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日々のぼやき
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 肩は薄くて少しでもちからを込めたら粉々に壊れてしまいそうだった。もちろんそんなことは無いのだけど。意外とこの少年の芯は強いのだ。そのことを雲雀は知っていた。
 ツナは雲雀のとなりでじっと外を眺めている。放課後の教室。安っぽいアルミのサッシ。夕暮れの日差しが幼いツナの横顔を茜色にそめていた。薄い稜線をえがく鼻の筋に光線があたっててらてらと白く光ってみえる。橙色になった髪を吐息でふきあげて、その感触が思いのほかくすぐったかったのかふにゃりと笑う。まるで赤ん坊のような笑みだ。雲雀はその笑みから視線を逸らした。
 幼さを見せるツナの笑顔は雲雀の心に何かしらの小波をもたらした。もどかしさとか息苦しさとか、言いようの無い焦燥にも似た感情で、雲雀の奥底を淡く燻ぶる。本物の赤ん坊を相手にしているようなものだ。状況や心情など赤ん坊は解さないし、ましてや責任を負ったりもしない。
 ツナがそうだ、とは言わない。けれど不思議と、ツナの不用意な笑みは苛立たしいほど邪気の無い赤ん坊をおもわせる。
「何がそんなに楽しいの、」
 気が付けば口に出してしまった。言ってしまってから口調の刺々しさに自分で驚く。表情は一ミリも動かなかったが、一瞬だけ咽喉がくっと低く鳴った。
 ツナはきょとんと雲雀を見ていた。窓枠に手をかけたまま、不思議そうに雲雀を仰ぐ。やがてうっすら開いていたくちびるがきゅっとあがった。白い歯がかおを覗かせる。黒目がちの眸が静かに瞬いた。
 笑ったのだ。その笑みの確固さに雲雀の全身が一瞬だけ総毛だった。
「俺が笑ってるのは、」
 ツナが囁く。細められたひとみに映る自分の姿を、雲雀はとほうもない偶然だと感じた。
「ヒバリさんが居てくれるからです」
 言葉。笑み。視線。空気。
 雲雀はそう、とだけ応えた。ツナの眼球に映る自分がどんな顔をしているのかは窺うことができなかった。それでも、少しでも笑みに似た表情が作れていればいいと思った。それだけで、世界は完璧になるのにと思っていた。
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