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日々のぼやき
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 じっとしていろ、とネウロが言った。いつもと同じような命令口調で、けれどいつもよりも少しだけ棘をぬいた声で。
「動くと食み出る」
 と、いつでも超然としている魔人にしてはやけに真剣なひとみで弥子のかおを覗き込んでくる。長い指が弥子のおとがいを摘んでくちびるを開かせる。ネウロのゆびさきは冷たくてとても気持ちがいい。瞼をとじた弥子のくちびるに、べっとりと重い感触が重なった。
 弥子はわずかに眉をひそめる。鼻腔をくすぐる口紅の香りは苦手なものだった。皮膚に貼りつく違和感も、紅筆がうごくたびに左右にひっぱられるくちびるの感触も、あまり好きではない。
 それでも弥子はじっとしていた。ネウロの吐息が肌をくすぐる。
 目をあければきっと魔人はすぐそばにいるのだろう。それこそ、境界線が曖昧になるくらい、近くに。
「ネウロ、」
 囁くように呼びかけると、筆の動きがぴたりと止まった。どきりとするほど近くでネウロのこえがする。
「動くな、ヤコ」
 歌うような声と、ネウロの熱。口紅を混ぜるときのように、混ざり合って溶け合えたらいいのにと弥子は思った。
「じっとしていろ」
 魔人は誘う。
 
「終わったら、我輩がこの唇を食ってやろう」
 
 それは罠のような、甘美な睦言。
 
 
終わり。
きっとネウロ的には餌をやって肥えさせてから美味しく頂こうとかそんな感じなのではないかと。ヤコちゃんに化粧をする魔人って、かなり美味しい構図ですね。
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