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日々のぼやき
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 廊下ですれ違った、たった一瞬がひどく長く感じた。視線自体が意志をもってこちらに向けられる。向日葵の花をおもわせる髪の隙間から強いちからを放つひとみが垣間見えた。
 触れていない皮膚の熱さを思い出した。廊下には窓から差し込んだ日差しが降り注いでいる。茹だった空気をかきまわすような鈍重さで腕を伸ばした。感覚は長いのに時間は短い。体が世界から引き剥がされるような感覚をリアルに感じた。ゆびさきが首筋に触れる。茶色いひとみが円くなって、色の濃い虹彩に自分が映し出されていた。それが可笑しくて少しだけ笑うと相手も微かにほほ笑んだ。くちびるがきゅっと引かれて白い歯が零れる。日差しをあびたくちびると皮膚の境い目は濡れていて、薄紅色というより蒼ざめてみえた。
 こしを伸ばす。首筋に手のひらを押し当てたまま、掠めるようなキスをした。一瞬なのにひどく長い。そっとくちびるを離して相手を伺うと、小動物のようなひとみが一瞬呆けて瞬きをして、やがて耳まで真っ赤に染まった。
「ヒバリさんっ!」
 上擦った声が夏の空気を心地よくゆらした。膨れるツナが面白かったので雲雀はもう一度キスをした。
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