luna y perroluna y perro
日々のぼやき
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好きなんかじゃないから、と囁く声は壊れたレコードのように繰り返されて夜の空気に昇っていく。言葉の行く先を眺めた視界には天井から吊り下げられた蛍光灯だけが白く光っていた。時折またたき、一瞬消える。意味もなくその一瞬の暗闇を見つめてから、目線を下げた。
ソファに横たわった自分の体のうえに、寝そべるように細い体が寄りかかっている。痩せた体なので特に重さは感じない。腹筋の上に付けられた肘も、重いというよりは骨があたってくすぐったい。
弥子は決してネウロを見ようとはしなかった。しかし離れることもせずにただネウロの胸にほほをあてて遠くを見ている。
白んだ灯りに照らされた伽羅色の髪に触れようとして、やめた。正直な話、弥子に触れるのは億劫だった。少しでも力を込めれば壊れてしまいそうで、またはそんな莫迦なことを考えてしまう自分が不快で、結局伸ばしかけた手を引っ込めて自分の髪をかきあげた。
人間というのは面倒だ。脆く、果敢無く、すぐに壊れる。
下界で暮らしてからそれほどの時間は経っていなかったがネウロが人間に対して抱く感想はそれほど変わらない。面倒だから関わりたくはない、だが謎を食うためには人間に接触しなければならない――面倒なことだと、心底思う。
「好きなんかじゃないから」
また弥子が言葉を漏らした。何度も繰り返されるその言葉は既に聞き飽きていたが特に黙らせようとも思わない。弥子にどう思われていようがネウロには露ほどの関心もないし、第一ほほを寄せられたまま告げられるその言葉は嘲笑するほどのお為ごかしだ。
「好きなんかじゃないから」
呟くたびに、ぴったりと付けられた弥子のほほが微かに震える。表情は見えなかったが言葉は驚くほど無表情で、しかし震えるほほが何か別のことを伝えているようにも、ネウロには思えた。
人間は面倒だ。ネウロは思う。
脆く、果敢無く、すぐに壊れる――そのくせ、目には見えない強固な鎖でこちらを雁字搦めにしてくる。ゆび一本で潰せそうな、華奢な肢体を見下ろしてネウロは僅かに笑う。正直、弥子の呟きを聞くのはひどく心地よいことだった。
おわり。
ソファに横たわった自分の体のうえに、寝そべるように細い体が寄りかかっている。痩せた体なので特に重さは感じない。腹筋の上に付けられた肘も、重いというよりは骨があたってくすぐったい。
弥子は決してネウロを見ようとはしなかった。しかし離れることもせずにただネウロの胸にほほをあてて遠くを見ている。
白んだ灯りに照らされた伽羅色の髪に触れようとして、やめた。正直な話、弥子に触れるのは億劫だった。少しでも力を込めれば壊れてしまいそうで、またはそんな莫迦なことを考えてしまう自分が不快で、結局伸ばしかけた手を引っ込めて自分の髪をかきあげた。
人間というのは面倒だ。脆く、果敢無く、すぐに壊れる。
下界で暮らしてからそれほどの時間は経っていなかったがネウロが人間に対して抱く感想はそれほど変わらない。面倒だから関わりたくはない、だが謎を食うためには人間に接触しなければならない――面倒なことだと、心底思う。
「好きなんかじゃないから」
また弥子が言葉を漏らした。何度も繰り返されるその言葉は既に聞き飽きていたが特に黙らせようとも思わない。弥子にどう思われていようがネウロには露ほどの関心もないし、第一ほほを寄せられたまま告げられるその言葉は嘲笑するほどのお為ごかしだ。
「好きなんかじゃないから」
呟くたびに、ぴったりと付けられた弥子のほほが微かに震える。表情は見えなかったが言葉は驚くほど無表情で、しかし震えるほほが何か別のことを伝えているようにも、ネウロには思えた。
人間は面倒だ。ネウロは思う。
脆く、果敢無く、すぐに壊れる――そのくせ、目には見えない強固な鎖でこちらを雁字搦めにしてくる。ゆび一本で潰せそうな、華奢な肢体を見下ろしてネウロは僅かに笑う。正直、弥子の呟きを聞くのはひどく心地よいことだった。
おわり。
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