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日々のぼやき
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 赤い髪は力を解き放つ証であるとともに自らが人間ではないことを示していた。化け物と、人外めと罵られたこと経験などあまりに多すぎて秋葉はその正確な回数さえ憶えてはいなかった。
 どうでもいいことなのだと、深く思う。
 人間が蔑むそのひとみも、こちらを指差すその怯えも、人外へ楯突くその利己さすら如何でもいいと心底おもえる。秋葉にとって大事なものは血であり、家であり、封印である。そのほかのものなど然して意味のない、積み木の玩具の一部に過ぎない。
 髪を梳くと檻髪が夜の空気をあでやかに彩る。秋葉はいつもの通り全てを諦めた笑みを浮かべようとしたが不思議と表情は強張ったものになってしまった。赤い髪が時折横切る視界の先にいるそのひとを、秋葉は泣きそうになりながらも必死に目を開いて見つめた。
「怖い?」
 尋ねる声は震えていて、自分らしくないと心底思った。泣きそうだとふと思ったときには目頭が痛いほど熱くなっていて、秋葉はあわてて顔を逸らした。泣き顔など見られたくなかった。月明りに伸びた自分の影がひどく惨めなものに見えた。
「怖くなんかないよ、」
 返事は穏やかで、柔らかな響きをしている。全てを包み込むような音韻に、それでも秋葉は顔を上げなかった。泣いてしまいそうだった。髪が、顔が、体が、熱い。
 
「きれいだよ」
 
 秋葉は両手で顔を覆った。ゆびさきが掬ってしまった自分の檻髪がひどく熱い。その熱さにひとみが焼かれて涙が一粒こぼれおちた。
 
 
おわり。
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